『賭けマージャンはいくらから捕まるのか?』 津田 岳宏 (著) のご紹介
賭けマージャンなんかして捕まらないだろうか? その答えに迫る本、『賭けマージャンはいくらから捕まるのか?―賭博罪から見えてくる法の考え方と問題点』 が、面白かったので、ご紹介します。
※ 2015/04/27にこのブログ記事の内容を、加筆・修正しています。
特徴を一言でいうと
賭け麻雀を切り口に、そもそも賭博は悪いことなのか?と問いかける。法律用語も学べます。
Amazonでの内容紹介
賭けマージャンはいくらから捕まるのか? 競馬・宝くじといった公営ギャンブルやパチンコが存在するなかで、賭博罪の意味とは?大相撲野球賭博問題への対応は、はたして正しいのか? 賭博罪のあり方を問う。
~ 賭けマージャンはいくらから捕まるのか? 目次~
マージャンと賭け
(前章) 悲しい前提、 Xの悲劇、 刑事手続の流れ、 刑罰とは、 実質レートと深夜営業、 結論、
宿敵185条、 原則と例外、 後藤田答弁(後章) 賭博罪は不当である、 公営ギャンブルの現状、 公営競技の矛盾、 パチンコ屋、
ギャンブルは本当に悪いことなのか、「賭博=大悪」というマインドコントロール、 賭博罪をめぐって、 常識は変わる(最終章) 大相撲野球賭博問題に思う
はっきりいって、タイトルになっている、『賭けマージャンはいくらから捕まるのか?』に関する明確な答えは書いておらず、「少額ならほとんど捕まらないが、100%逮捕されないとは言い切れない」というような、曖昧な結論になってます。
というのも、刑法第185条の「一時の娯楽に供する物を賭けた」 という、「一時の娯楽」の範囲が明確になってないので、「小額」「常識的な範囲」というような抽象的な表現でしか表せないようです。
『いくらから捕まるか?』というより、『どういうケース・どういう場所で捕まりやすいか?』の参考にはなります。「セットマージャンの逮捕の可能性」等は、ぜひ本書で確認してみて下さい。
ピックアップフレーズ
長期間の勝負なら腕が上の者が必ず勝つが、短期間の勝負なら初心者が上級者に勝つこともあるという、必然性と偶然性を絶妙なバランスであわせ持ったゲームでもある。こういった「金を賭けて楽しむのに適した」特徴をマージャンは持っている。(P5)
被疑者とは「なんらかの罪を犯したと疑われる者」のことをいう。マスコミがいう「容疑者」のことである。 (P15)
なにごとも度をすぎれば弊害があり、なにごとにも度をすぎてのめり込む人は一定数いる。それはギャンブルだけのことではなく、ギャンブルのみを刑法上規定する根拠にはならない。(P125)
カジノ合法化について問われた民主党の小沢一郎は「選挙はギャンブルそのものだよ」と言って笑ったという。 (P143)
賭博罪撤廃の最大のメリットは「人々の多様な娯楽を確保できる」という点である。(P182)
著者の、弁護士 津田さんの主張としては、
▼ 賭博罪自体が不当である
▼ ギャンブルは本当に悪いことなのか?
▼ 「賭博=悪い事」と、日本人はマインドコントロールされている
と、賭博容認を主張されているご様子。こう書くと、凄く固い本のようですが、かなりユーモアのある文章で書かれているので、読みやすい一冊です。個人的には「それはどうかな?」と思う点もありましたが、法律用語を中心に知らなかった知識が得られて、楽しい一冊でした。
点5雀荘の摘発について
今年の4月、東京の点5雀荘が摘発されて話題になりましたね。麻雀ブログやツイッターでの反応をみると、「点5で捕まるのか」「警察は何をやってるんだ」など、警察を批判している人も多かったように思います。
この本に書かれているように、
現在のフリー雀荘の従業員(メンバー)は、世間が思うほどいい加減な人たちではない。ほとんどのメンバーたちは、愛想良く一生懸命に接客をしている。(P160)
のは、僕も良く知っていますが、警察が、コスプレやギャル雀など、「話題性のある雀荘を摘発する」ことや、いわゆる見せしめのために「有名人を逮捕する」ことは、ある意味、当然のことだと思います。警察サイドとしては、「法を順守することを、世の中にアピールする」のが狙いですからね。
賭けマージャンが厳密には違法である以上、(小額とはいえ、賭けを行っている)フリー雀荘がとるべき対応は、「法律を守るか、 法律を変えるか」というシンプルなものでは無いでしょうか。その意味で、法改正に向けて動いている、全国麻雀業組合総連合会さんの、『日本麻雀政治連盟』のご活動は、僕も注目しています。
個人的には、
麻雀が知的ゲームとして充分に認知された頃に、点5ぐらいの賭け麻雀を法律で明確に容認しても良いのでは
とも、思ってます。僕は、「麻雀はギャンブルではなく、ギャンブルに使用されやすい知的ゲーム」だと考えてますが、ギャンブル自体も嫌いでは無いですからね。ギャンブルから学ぶことも多いですし、ある意味、「就職・結婚や人生はギャンブル」という一面もあると思います。
なんにせよ、『賭けマージャンはいくらから捕まるのか?』は、いろいろと考えさせられる一冊でした。「被疑者」「送検」「送致」「起訴」「執行猶予」など、ニュースでよく聞く法律用語にも詳しくなれるので、お薦めの一冊です!