【書評】『運を支配する』雀鬼・桜井章一&現麻雀最強位・藤田晋(著) ~ なぜ運は特定の人に集中するのか?
20年無敗の雀鬼・桜井章一さんと、現麻雀最強位のサイバーエージェント社長・藤田晋さんの共著『運を支配する』が発売されました。「新書だから気軽に読めそうだ」と思って読み進めてみたところ、字もやや小さめで235ページと多く、内容も詰まった読み応えのある一冊でした。
[記事公開日:2015/03/23、 最終更新日:2015/04/22]
本書は、一言でいうと
勝負師・桜井章一さんの本質をついた言葉を、藤田晋さんが仕事や人生に置き換えてビジネスマンに分かりやすく解説する内容
で、
勝負に必要な、運をものにする思考法や習慣が学べる
良書となっています。
▼ [追記] 藤田社長に、貴重なサインを頂きました! 嬉しいことに、少しだけ麻雀も同卓させて頂きました。
▼ 内容紹介より
なぜ運は特定の人に集中するのか?
東証一部上場のベンチャー経営者と、無敗伝説の雀鬼が突き止めた39の“ツキの極意”とは。
勝負でたまにしか勝てない人と、勝ち続ける人ではいったい何が違うのか――。 麻雀でも、ビジネスの世界でも、懸命に努力したからといって必ず勝てるわけではない。 勝負に必要なのは、運をものにする思考法や習慣である。 その極意を知っている人と知らない人とでは、人生のあらゆる場面で大きな差がつくのだ。
「『ゾーン』に入る仕掛けをつくる」「パターンができたら自ら壊せ」「ネガティブな連想は意識的に切る」「違和感のあるものは外す」等々、 20年間無敗の雀鬼・桜井氏と、「麻雀最強位」タイトルホルダーのサイバーエージェント社長・藤田氏が自らの体験をもとに実践的な運のつかみ方を指南。
本書は、以下の[ ]で示した全39のトピックについて、「桜井さん⇒藤田さんの順番」で同じテーマを語る構成です。
1章 ツキを整える [ シンプル ] [ 変わり目 ] [ 自滅 ] [ 逆風と順風 ] [ 力み ] [ 見切り ] [ 運の総量 ]
2章 運をつかむ人の習慣 [ 型を壊す ] [ 勝負所 ] [ ゾーン ] [ 答え ] [ 修羅場 ] [ 気分 ] [ 勝ち続ける極意 ] [ 「絶対」 ] [ 直感 ]
3章 悪い流れを断つ [ 誘惑 ] [ スランプ ] [ ツキと雑用 ] [ 開き直り ] [ ポジティブ思考 ] [ 努力 ] [ 思い込み ] [ 心の揺れ ] [ 心の囚われ ] [ 基本 ]
4章 ツキを持続させる [ 終わりと始まり ] [ 流れ ] [ リスク ] [ 真面目 ] [ 逆境 ] [ なんとかなる ] [ 楽 ]
5章 運をまねく作法 [ 借り ] [ ミス ] [ 準備 ] [ 空気 ] [ 不調 ] [ 勝者の役割 ]
例えば、[ ツキと雑用 ]という項目だったら、桜井章一さんが「雑用を軽んじると運から見放される」と語った後に、それを踏まえて藤田さんが「手を抜くことを覚えるとツキが逃げる」という表題付きで解説しています。
↑ 帯の裏でも、表題が一部紹介されていますね。
▼ [追記] 電子雑誌「SUPERCEO」に、藤田社長がご出演! 真剣勝負の競技麻雀について4分ほど語っています。
現麻雀最強位・藤田晋語録ピックアップ
まず、藤田さんの言葉で、僕が印象に残ったフレーズをピックアップしてみます。
また、仕事や経営といったものが、成績がいい順に結果を出せるのであれば、猛勉強をしてきた大学教授やMBA保持者がトップに躍り出るはずですが、現実はそうではありません。頭がよくて才能もあり、かつ人一倍の努力をしても、運やツキといった目に見えない流れを読む勝負勘がなければそれらを、フルに活かすことはできないのです。(P4 まえがき)
「勝負勘」とは、要は流れを見極める力のことですが、気をつけないといけないのは、さまざまな流れの中には騙される流れも存在していることです。(P110 [ 誘惑 ])
本書のタイトル『運を支配する』と言う言葉には、目に見えず論理的に説明しづらいものに対しても主体性を持って取り組もうとする意思が感じられますが、運を左右する大きなポイントは、最終的には流れをどうとらえるかだと思います。(P170 [ 流れ ])
↑ 詳細は本書で確認して頂きたいですが、藤田さんが「勝負勘」や「流れ」といった目に見えないものを非常に重視されている事が分かります。
桜井会長から学んだことで、仕事や人生でとくに大きな影響を受けたものは何かと問われれば、「己を律する」ということ、それから「正々堂々と戦う」の2つだと思います。(P5 まえがき)
たくさんいた同世代のライバルたちは、僕が抜いたのではありません。勝手に落ちていったのです。
仕事のレースで脱落していく人を順番にあげると、①忍耐力のない人、②目標設定の低い人、③固定観念が強くて変化できない人、になると僕は思っています。(P34 [ 自滅 ])
また社内、社外にかかわらず、たとえ口約束であっても、交わしたことはその場でメモをとって必ず守るようにしています。(中略)
「どんな小さな約束でも守ってくれる」ということが、どれだけ大きな信頼につながるか、僕は身をもって知っているからです。(P122 [ ツキと雑用 ])
慌てず丁寧にやる。全体観を持つ。素直に自分を見つめる。
こうしたことが、流れが悪いときに仕事をする上での僕の基本姿勢なのですが、とりわけ丁寧にやるということは、とても大事だと思います。(P159 [ 基本 ])
想像力を働かせて、相手のことを考え思いやっていれば、仕事もできるようになるし、応援してくれる人も増え、おのずと運気は上がっていくと思います。(P216 [ 準備 ])
↑ 『運を支配する』というタイトルから、スピリチュアルな内容を想像された方も多いかもしれませんが、藤田さんが語る言葉は、仕事や人生に役立つ、地に足の着いた言葉が多いです。
なお、今回のように「同じトピックを二人が語る形式」の本としては、藤田さんは、以前、幻冬舎社長の見城徹さんと『憂鬱でなければ、仕事じゃない』・『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』という著書も出されています。こちらも、見城さんと藤田さんのハーモニーが素晴らしく、為になる本です。
雀鬼・桜井章一語録ピックアップ
続いて、桜井さんの言葉で、僕が印象に残ったフレーズをピックアップしてみます。
私は運は自ら呼び寄せるものではなく、「運がその人を選ぶ」と思っている。普段からしかるべき準備をし、考え、行動をしていれば、おのずと運はやってくるものだからだ。(P20 [ シンプル ])
私は運量だけでなく、運が持続する時間も併せて読んでいた。たとえば「相手とこちらの運量の差が20とすれば、後30分くらいはこの勢いが続くな」といった具合だ。(P27 [ 変わり目 ])
そう、生きている間は、運は無限にあると思っていいのである。だが、それはダイヤモンドの鉱脈を掘るように、運の鉱脈をがんがん掘っていけば、ツキまくった人生が送れるという単純は話しではもちろんない。(P54 [ 運の総量 ])
↑ 運の話しは、正直「本当ですか!?」と思う記述もあるんですが、そこに藤田さんの分かりやすい解説が加わる事で、「あぁ、なるほど」と納得感が増す内容になっています。
長い年月を経て会った藤田君には、昔にはなかった勝負師の風格が備わっていた。それは経営者の最大の使命ともいえる組織の利潤追求を超えたところで、彼が人間として大事なものを鍛え、磨くことを一瞬も怠らなかった証のように私には感じられた。(P234 あとがき)
本書の白眉(はくび)は、藤田君が丁寧に思考を重ね、ときに身を捩る(よじる)ようにしながら、私の語る運やツキの話を仕事上の事柄に翻訳している部分にあると思う。(P235 あとがき)
以前、卓球のオリンピック選手が、私に体の使い方に関してアドバイスを求めて、道場に来たことがあった。(中略)
これだけ練習したから、それに見合う成果が返ってきてほしいと願うのは、かなり一方通行の思いである。それで彼女には「それじゃ、ストーカーだよ。卓球からもっと愛してもらえるようにならないと・・・・・・」といったことがある。(P134 [ 努力 ])
努力に囚われすぎないためには、周りの人への感謝の心を持つことも大事だ。つまり、それだけ努力できたのは自分一人の力だけではなく、環境や周囲の人のおかげだと思うのだ。(P134 [ 努力 ])
たとえば麻雀の牌はどれだけ柔らかく打てるかでその人の実力がわかったりするが、麻雀に限らずどんなことにも力を抜いて柔らかく考え、動くことはとても大事だ。これは基本中の基本である。(P156 [ 基本 ])
↑ 桜井さんの含蓄のある言葉や、人情味のある発言も多いです。
お笑い芸人にも、桜井章一ファンは多く、特に、スピードワゴン小沢一敬さんと、インスタンジョンソンじゃいさんが強豪雀士として有名です。
2012年11月に放送され、麻雀好きの間で大きな話題になった、アメトーーク!「麻雀芸人」の回では、終盤に桜井さんの特集が組まれていました。「麻雀芸人」は、ちょうど3月27日発売の「アメトーーク! DVD 33(セル版)」の特典映像に収録されているので、未視聴の方は、ぜひチェックしてみて下さい。(※ レンタル版には収録無し)
麻雀芸人出演者: 神内智則さん、アンジャッシュ児嶋一哉さん、ロンドンブーツ田村亮さん、ケンドーコバヤシさん、博多華丸さん、スピードワゴン小沢一敬さん、狩野英孝さん、(VTR出演)平成ノブシコブシ徳井健太さん、(麻雀素人してゲスト出演)千秋さん
司会の雨上がり決死隊の宮迫博之さん・蛍原徹さんも、かなり麻雀好きのご様子でした。
桜井さんの麻雀観を深く知りたい方は、下記の新刊をご覧になると良いでしょう。他の著書だと、以前、MONDO TVの取材時に じゃいさんにインタビューさせて頂いた時に、じゃいさんは『無敗の手順』を絶賛されていました。(※こちらは入手困難ですが)
麻雀の記述もあり!
桜井さんと藤田さんの共著という事で、本書は「麻雀の記述」も1~2割ぐらいでしょうか、散りばめられているので、麻雀ファンはより一層楽しめると思います。
実際、麻雀というものをつぶさに見ていくと、ビジネスの縮図のようなものがあちこちに垣間見えます。要約すると次のようになります。
① どんな牌が配られるかわからない「不平等」なところからスタートする。
② 一定のルールにのっとり、配られた牌をもとに、いかに人より早く大きく上がれるかの「相対的な競争」になる。
③ 局の進行、相手との点棒差など刻一刻と状況が激しく変化する中で、冷静で素早い「状況判断力」が問われる。
④ 4人に一人しか上がれないため、大変の時間は「忍耐力」を要する。
(P4 はじめに 藤田さんの言葉)
麻雀の記述も読みやすく配慮されているので、麻雀未経験者もいろいろと楽しめると思います。本書は一時、Amazonの書籍売上げ総合1位(日本一!)を獲得するなど、売れ行きもかなり好調のようなので、「『運を支配する』を読んで、麻雀に興味を持った!」という人が増えるといいなと感じました。
麻雀は世界一面白いゲームです!RT @pottikyoto: @susumu_fujita
究極のゲームにも関わらず、それをとりまく人や環境のせいで日陰モノになっていた麻雀ですが。
藤田さんのご活躍のお陰で、少しずつ日向に出てこれる雰囲気が感じ取れて嬉しいです✨
— 藤田晋 (@susumu_fujita) 2015, 4月 22
最近ラジオで、あの明石家さんまさんも、
麻雀やってると、人生教えてくれるんですよ(明石家さんまさんの言葉)
と語ってましたよ。(麻雀の話は27:34~28:55あたり)
芸能人や経営者にも愛好家の多い麻雀。以前、麻雀を覚える5つのメリットという記事も書いたことがありますが、興味を持った方は、ぜひ麻雀を覚えてみてはいかがでしょうか?
さて、本書の麻雀の記述で、特に興味深かったのが、デジタル・アナログ麻雀にも触れているところ。
デジタル派に対して旧来のアナログ感覚の打ち手は”オカルト派”と揶揄されていて、両者の間では論争が起こっています。
デジタル派は、それこそ「ツキの流れ」「勝負の綾(あや)」「牌の勢い」といった合理的に説明のつかないものなど存在しないし、仮にあったとしても考えてもムダだと主張し、オカルト派はそうしたものこそが麻雀の神髄なのだといいます。(P103 [ 直感 ] 藤田さんの言葉)
驚いたのは、麻雀がこの10年ほどの間にかなりの進化を遂げていたことです。
それは明らかにネット麻雀の影響です。勝ち方のパターンなどいままでよく見えなかったものが統計的なデータで表されるようになり、それをベースにして勝負する風潮もある。(中略)
当初はデジタル的な麻雀に対して僕は否定的だったのですが、いまのトレンドを知ると、データや知識をしっかり把握した上で勝負しなければ、もはやいくら強い打ち手でも勝てないと思うようになりました。(P63 [ 型を壊す ] 藤田さんの言葉)
※ 人気ネット麻雀ゲームの参考 >> オンライン麻雀ゲームマトリックス
藤田さんは、デジタル的な打ち方を取り入れつつも、下記のように語っています。
三木谷社長の有名な言葉に「経営は右脳と左脳のキャッチボールである」というものがあります。僕は麻雀もそれと同じで、右脳と左脳のキャッチボールで成り立っていると思っています。そもそもデジタル派が正しいとかオカルト派(アナログ派)が正しいということではありませんが、少なくとも麻雀はデジタル的な数字やデータだけで割り切れるような単純なゲームでないことは確かです。(P104 [ 直感 ] 藤田さんの言葉)
最近は、麻雀戦術書も『神速の麻雀 堀内システム51』・『勝つための現代麻雀技術論』・『最強デジタル麻雀』・『科学する麻雀』など、デジタル系の本が人気です。麻雀プロになって話題になった、経済評論家・勝間和代さんにも、前に インタビューで語ってもらいましたが、勝間さんは完全にデジタル派とのこと。
僕自身(@Jan_Ryu [ツイッター])は人生で、九死に一生を得たことがあったり、これまで「運が良かったとしか言いようがない」経験をしている事もあって「人生でも麻雀でも、運や流れはある」と信じて(感じて)いて、桜井さん・藤田さんの「運や流れを重視する」姿勢は共感を覚えます。
ちなみに「右脳を鍛える」「感性を磨く」参考になる本だと、個人的には下記の『ハイ・コンセプト』が役満級におすすめです。
麻雀界のデジタル・アナログ論争は、今に始まったことではなく、2002年に出版された『バカヅキタイフーン – マージャン百科全書』馬場裕一&片山まさゆき(著)でも特集が組まれています。
まぁ、デジタル雀士もオカルト雀士も、強い人はどちらも強いですし、価値観や好みの問題も大きいように思います。
・・・あと、本書を読んで、「これは、麻雀の成績アップに凄い役立つ!」と思ったのが、「ミスへの対応」の記述。この記述は、麻雀愛好者やスポーツ選手などに凄く参考になる記述だと思います。
ミスへの対処が正しければツキが戻る(P207 [ ミス ] 桜井さんの言葉)
雀鬼が推奨する「ミスへの対処法」とは? 詳細はP207~211でご確認頂きたいですが、この部分を読んだだけでも、「この本を買って良かった!」と感じました。
経営者にも麻雀愛好家は多い
さて、藤田さんが現在のタイトルホルダーである、竹書房主催の麻雀最強戦。2014年11月に特別対局として、『麻雀最強戦 エキシビジョンマッチ 日本トップ経営者頂上決戦』という豪華な経営者対決が実現したことをご存じでしょうか?
【出場選手(※敬称略)】
株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長・藤田晋(ふじたすすむ)
株式会社カヤック 代表取締役CEO・柳澤大輔(やなさわだいすけ)
SNS株式会社 ファウンダー・堀江貴文(ほりえたかふみ)
アース製薬株式会社 取締役会長・大塚達也(おおつかたつや)
株式会社ドンキホーテホールディングス 代表取締役会長兼CEO・安田隆夫(やすだたかお)
株式会社クレディセゾン 代表取締役社長・林野宏(りんのひろし)
株式会社鉄人化計画 代表取締役会長・日野洋一(ひのよういち)
株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長・宇佐美進典(うさみしんすけ)
対局前後のコメントや、安田さんの個性的なドンキホーテ風(?)捨て牌など、いろいろと面白い対決でした。TSUTAYAやGEOにてレンタル可能なので、麻雀ファンの方は、ぜひご覧下さい。
また、この対局にも出場されていた、林野宏さんは、『誰も教えてくれなかった 運とツキの法則』という本を書かれているのですが、非常に面白かったので、『運を支配する』が気に入った方は、こちらも読まれると良いと思います。
林野さんの『BQ〜次代を生き抜く新しい能力〜』では、巻末に藤田さんとの対談も掲載されています。
以上、雀鬼・桜井章一さんと、現麻雀最強位・藤田晋さんの共著『運を支配する』。仕事・人生・雀力アップに役立つオススメの一冊です。特に藤田さんの「まえがき」と、桜井さんの「あとがき」の記述は分かりやすく熱い内容なので、書店でぜひご確認下さい!
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