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第20回. [本章] ~ 麻雀「プロ」の創生、共生、新生 ~⑳(バビィの新・「プロ論」)
[更新日:2024/07/30、公開日:2017/10/01]
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月刊「麻雀界」で連載されていた、バビィの新・「プロ論」。以下、「2017年9月1日発売号」の連載内容を特別に掲載させて頂いています。(太字・色づけ等は当サイトにて付与)
▼▼▼ ここから馬場プロの連載より ▼▼▼
麻雀界が抱える「芽無し案件」
映像コンテンツの増加やSNSの普及で、一気に認知度を高めた麻雀プロ業界。ところが皮肉なもので、そのことが逆に麻雀プロ業界の「アキレス腱」を露呈させることになりました。
きっかけは、生配信された、ある対局の決勝戦。優勝の可能性がなくなった、いわゆる「芽無し」の選手が「オールツモ切り」という挙(きょ)に出たのです。
【注】本稿では旧プロ論時代から「めなし」を「芽無し」と表記しております。
これは、その選手が事前に用意していた「芽無しになった際の打ち方」でした。
ひと昔前なら、即ち生配信もSNSも無い時代だったら、一部の関係者やファンの間でしか話題にならなかったことでしょう。しかし、この時代はそうはいきません。生で目撃されSNSですぐ拡散される時代。
SNS上ではプロアマ問わず、様々な論戦が展開されました。それなのに何の結論も出ず、解決もされなかったのです。この事態を憂いたサイバーエージェントの藤田晋社長は、自身のコラムでこう綴っています。
――優勝の目がなくなってオールツモ切りしたことが業界全体で波紋を呼びましたが、リーダーが誰かもはっきりしない今の麻雀界で各々が自分の考えを発表すれば、さらに混乱を招くだけなのです。(中略)
トップダウンで決断を下す。ただし、私利私欲があってはいけない(中略)
そんなリーダーが現れることを心より願っています
(近代麻雀 2017年7月1日号・「仕事が麻雀で、麻雀が仕事」より)
また麻雀ポータルサイト「麻雀ウォッチ」では、河下太郎編集長が自身のコラム「tarooが斬ル」内で、芽無し問題の解決策を含む麻雀プロ業界の新システム案、またプロ団体をまたいだ共通ランキングの必要性を説かれました。
▼ 麻雀ウォッチ 河下編集長の連載も合わせてご覧ください。
統一したプロランキングで目無し問題も解決できる!? - 麻雀ウォッチ https://t.co/lsA1HS3auD
— 麻雀ウォッチ (@mjnewsnet) 2017年6月26日
これに対し藤田氏が、今度はツイッターで、
――プロランキングやタイトル戦のグレードが統一されないとスポンサーも増えないです。似たようなタイトル戦を簡単に作られてしまうようでは価値が怪しいので、統一された権威付けが必要です。プロが対局料で食える世界を目指すならまずそこは避けて通れないと思います
(藤田晋社長のツイートより)
とツイート。
プロランキングやタイトル戦のグレードが統一されないとスポンサーも増えないです。似たようなタイトル戦を簡単に作られてしまうようでは価値が怪しいので、統一された権威付けが必要です。プロが対局料で食える世界を目指すならまずそこは避けて通れないと思います https://t.co/CjllRzv9sR
— 藤田晋 (@susumu_fujita) 2017年6月27日
すると大手ゲーム会社の麻雀ゲーム開発責任者の方が、
――なぜ麻雀競技団体主催のタイトル戦にスポンサーがつかないのか。答えは簡単。スポンサーの費用対効果が乏しいから。スポンサーに対して何らかのメリットを提示できないようでは、スポンサーの理解・共感は得られません
(統括ディレクター・T畑氏のツイートより)
と根本的な問題点を指摘。
オールツモ切り案件に端を発した論争は、いつの間にか大企業の社長やディレクターを巻き込んで、麻雀プロ業界への疑問や提言が成されたのです。
残念なのは、今現在、プロ団体側がこれらの提言に対して何もリアクションを起こしてないこと。もしかしたら、水面下で何らかの接触なり交渉が行なわれているかもしれませんが、目に見えない以上「プロ団体は回答しないんだ」とファンが不信感を募らせるのも仕方ないと言えるでしょう。麻雀プロ業界と、その業界を応援しようとしている企業側との温度差は何か。それはやはり、本稿の序章で書き記したように、麻雀プロの誕生からプロ団体の設立、そして分裂、その経緯に問題があったと言わざるを得ません。例の「芽無し案件」も、そこに起因しております。
これに関しては、六年前の旧プロ論でも言及いたしました。案の定、当時の麻雀プロ業界からは何の反応もありませんでした。
それが最近、「麻雀ウォッチ」さんが、その六年前の拙文を取り上げ、内容に一定の評価を与えてくださったのです。物書きの端くれとして、こんなに嬉しいことはありません。ですが、よく考えてみたらおかしな話とも言えます。
▼ 六年前(2011年)の旧プロ論の記述もご覧ください。
ゴルフのツアー制度こそが麻雀に適したシステム!? - 麻雀ウォッチ https://t.co/BT7uKz7fnL
— 麻雀ウォッチ (@mjnewsnet) 2017年7月5日
六年も昔の文章が、今に通じるというのは、何か変ですよね。ようするに、それが麻雀プロ業界の実状なのです。
AbemaTVさんを始めとする映像コンテンツの充実、ツイッターを始めとするSNSの拡散力、アーケードやネットのオンライン麻雀の隆盛などにより、一見華やかな世界に映る麻雀プロ業界ですが、その「体質」は六年前と、いや何十年も前と変わっていないのです。
だから僕の文章が今でも通じるし、繰り返し繰り返し「芽無し案件」の論争が起きる。せっかく麻雀プロ業界を応援してくださる企業やメディアが増えた今こそ、「意識」も「体質」も変えるべきではないでしょうか。改めて前出の御三方の主張を簡潔にまとめてみます。
・藤田氏 …… トップダウンで決断を下すリーダー
・河下氏 …… プロ団体共通のランキングの確立
・T畑氏 …… スポンサーへのメリットの提示
これら3つの意見から導かれる対策とは何か。それは自ずと判ろうというものです。
(つづく)
▲▲▲ ここまで馬場プロの連載より ▲▲▲
▼ 上記は、月刊「麻雀界」2017年9月1日発売号に掲載された内容です。